2024/09/24 - 石川微睡 - (釉薬の世界)

たくさんの実験の中から生まれた、石川微睡さんの美しい釉薬。不安定さを残しつつも、どこかで調和している。彼女が感じる自然の美しさが、この繊細な釉薬にも映し出されています。そんな自然にまつわる名前が付けられた釉薬。それぞれに込められた意味をお伺いしたところ、素敵な想いが伝わるお話をいただきました。

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【鼓草 / つづみぐさ】
とある春に、思いがけずできあがった釉薬です。鼓草とは、たんぽぽの別名。柔らかな黄色の中に現れる細かな禾目が、小さな小さな花弁のように見えて、この名前を付けました。たんぽぽは、地中深くに根を張り、踏まれても負けない丈夫な茎を持ち、とても逞しい植物。自分の芯は一点に保ちながら、綿毛は軽やかに飛んで、どこまでも行ける。そんな、たんぽぽのような生き様に憧れます。

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温もりのある柔らかな黄色が印象的な釉薬。食卓にも、ほっこりとした優しい気持ちが届いてきますね。

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【細雪 / ささめゆき】
淵水と名付けた釉薬が、今回の焼成ではまた違った姿を見せたのでこの名前をつけました。鉢の斜面を流れる禾目は、粉上の雪が降り積り、さらさらと流れているように見えて。雪の粒がまだ小さいので、深くは積もらない。溶けながら少しずつ積もっていく様を連想しています。

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手に触れれば溶けてしまいそうな小さな粉雪。寒い冬に感じる胸の奥の小さな温もり。そんな一瞬を思い浮かべるような、綺麗な釉薬です。

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【薄明 / はくめい】
薄明とは、日の出前や日の入り後の空がうっすら明らむ時間帯を指す言葉です。この時間帯の空の色も、本当に気まぐれで移ろいやすく、しかし時には息を飲むほどの美しい色を見せてくれます。朝霧と同様に繊細な釉薬で、夜明け前の空のような青色をベースに、釉薬の掛かり方によって様々な表情が現れます。

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青とピンクのグラデーションが広がる空は「紅掛空(べにかけそら)」と呼ばれ、この発色が出たものは薄明シリーズの中でも「紅掛(べにかけ)」としているそうです。一瞬一瞬で表情を変える薄明の空。そんなドラマチックな時の移ろいを感じさせる釉薬です。

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【朝霧 / あさぎり】
その名の通り、朝に立つ霧のことです。朝の澄んだ空気を思わせるブルーの中に、予期せず白い霧が現れる。その霧の濃さや、出現する場所は、その日その刻によって異なる。気まぐれな朝の霧は、この繊細で不安定な釉薬にぴったりの名前だと思っています。

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朝の澄んだ空気をイメージしたという朝霧は、1日の始まりにヨーグルトやフルーツなどを食べるのにもピッタリです。朝からお気に入りの器に好きなものを盛り付けて食べる。それだけでも素敵な1日になりますね。

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【白珠 / しらたま】
オフホワイトのようなやわらかい白、それでいて光沢があり、丈夫な使い心地が気に入っている釉薬です。白珠とは、真珠の別名。どんな色にも似合う、包容力あるやさしい白色と、内から光を放つような輝きをもつ真珠になぞらえて、名付けました。

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シンプルだけれどずっと見ていられるような、不思議と引き込まれてしまうやわらかい白。他の釉薬とは対照的なミニマムなデザインは器を並べた時により目を惹き食卓のアクセントになってくれます。

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【焼きしめ】
釉薬を使わず、土本来の質感をそのまま残した焼きしめの器。使い込むほどに手に馴染み、土の風合いが一層豊かさを増していきます。素朴な印象を持つ焼きしめでも、石川微睡さんの器はその独特の形状から飽きのこない、魅力たっぷりの表情をしています。綺麗に彩られた釉薬の器と並べて使うと、テーブルの上に自然なコントラストが生まれて、それぞれが個々の魅力を引き立てます。

器もさることながら、微睡さんが扱う言葉ひとつひとつにも素敵な魅力があり、彼女の考えや見ている世界の美しさを感じることができます。
それぞれにストーリーが詰まった石川微睡さんの器。是非、その先の物語を皆さまの日々の暮らしの中で、お楽しみください。 

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