2023.10.30. JISEUNGMIN CERAMICS -interview-

今秋より『JISEUNGMIN CERAMICS(ジスンミンセラミックス)』のお取り扱いが始まります。こちらの記事では真摯に物作りに向き合うオーナーのJi Seungminさんの想いをインタビューを通して皆様にお届けします。

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─『JISEUNGMIN CERAMICS』を始めたきっかけを教えてください。

あるとき、友人から食器を作って欲しいという依頼がありました。
当時大学院生であった私はアート作品の制作に焦点を当てており、「器」の制作はそんなに難しくないと思っていたので依頼を引き受けて挑戦したのですが・・・

挑戦した矢先、実用的な物であるからこそ、細部まで注意を払う必要があることに気がついたんです。それから日々試行錯誤しながらも、なんとか完成させた器を友人に贈ると、自分が制作に焦点を当てていた分野でもあるアート作品の一部のように評価してくれたんです。友人の満足そうな姿を見た瞬間、達成感に満ち溢れたことを覚えています。
その後、多くの人から食器の制作に取り組むべきだと提案されたことが『JISEUNGMIN CERAMICS』を始めたきっかけです。

 

─作品を作る上で好きな工程と難しいと思う工程を教えてください。

好きな工程は、ろくろでの成型です。成形時に頭の中で思い描いたままの形を作り上げた際の達成感が好きなんです。
一番難しいのは最終の釉薬工程。新しい釉薬を試すと、予期せぬ結果が生じることも多く、テストから本制作まで納得のいく仕上げになるまでには並大抵ではない時間と、労力がかかります。

 

─自身の作品において影響を受けた方などはいますか。また制作の過程で気をつけていることはありますか。

大きく影響を受けたのは『李朝白磁』です。(※李朝白磁は、朝鮮王朝時代(西暦1392年~1910年)に作られた白磁を指し、器の色が白灰色をしているのが特徴。)

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私自信がつくる作品にはシンプルさと控えめなラインの美しさを追求しています。また完成した際の目に見えない部分(厚さ、重さ、掴み心地、マグのハンドルの手馴染みの良さなど)実用的な側面に気をかけています。

 

─自身のセラミックブランドとは別に、陶芸の大学講師としての顔も持つスンミンさんですが、陶芸を学ぶ学生について思うことや伝えたい事はありますか。

学生にはとにかく流行を追うことよりも、自身の好きな物を追求してほしいです。時間がかかっても"自身のスタイル"を作り出すことに焦点を当てることが重要だと伝えたいです。
また、毎年多くの学生が陶芸科を卒業しますが、この分野の市場が更に活発になり、学生、若者を含め、アーティストが働くための環境が国内で今以上に整っていくことを願っています。

 

─今回お取り扱いをさせていただくPATINAコレクションの特徴を教えてください。

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PATINAコレクションは、石灰岩の風化、鉄の錆び、銅の酸化など素材の表面がゆっくりと不可避に変化していく表情にインスパイアを受け制作されています。満足な仕上がりになるまでの道のりは非常に長く、土、釉薬、そして焼成環境などを数年研究しやっと今の表情に辿り着きました。

 

─最後の質問となりますが、今後の目標を聞かせてください。

ここ数年はブランドに主な時間を割いていたので、今後は個人での制作にも改めて力を入れたいです。

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全てのお話を伺った上でスンミンさんの作品を改めて眺めていると、穏かで控えめな中にどこか李朝白磁と重なるような芯の強さを感じます。未来を語るスンミンさんからは、陶芸に対してのひたむきな姿勢と溢れ出る熱意が感じられました。

『PATINAコレクション』の作品は11月4日(土)より販売予定となっています。本コレクションのテーマである自然や物質の変化のように皆様が日々使いこんでいくことで、器はゆっくりと風合いを変えていきます。変化も含めて、皆様にお楽しみいただければ嬉しく思います。

千駄ヶ谷店 (11月4日(土)より営業再開予定)
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