2024年 9月 23日
-NEW- 石川微睡
長い夏もやっと終わり、秋の訪れにぴったりな石川微睡さんの器が届きました。
ひとつとして同じものはない石川微睡さんの器。うつろい続ける自然の中で出会う一瞬の輝きのように、美しい物語を感じさせてくれます。当店では今回が初めてのお取り扱いとなりますので、作品に対する想いやこだわりについて、伺いました。
About
石川微睡さんは埼玉県所沢市を拠点に、豊かな自然に囲まれて作陶しています。以前は都内で会社員として働いていましたが、消費中心の生活に疑問を抱き、益子で陶芸を学ぶ道を選びました。彼女の作品には幼少期から親しんできた自然の美しさが反映されており、葉や石の形、川の流れといった自然の要素がインスピレーションの源です。また釉薬も自然にまつわる言葉で名前がつけられ、ムラや不安定さの中に繊細な美しさを見出しています。器と向き合い、自身の感覚でひとつひとつ丁寧に成形された柔らかな曲線は、手に優しく馴染む感触が魅力です。
Q 普段の暮らしについて、作品作りに影響することはありますか。
大学卒業後、都内に住み会社員をしていましたが、当時のお金を稼いでは消費する生き方に限界を感じ、益子に移り住み陶芸を学ぶことを決めました。指導所(陶芸学校)の卒業を機に地元へ戻り、今は、埼玉県所沢市で作陶しています。家のまわりには自然が豊富で、少し歩けば森を散歩でき、また、飯能や秩父の山、川へ出かけることも多いです。小さい頃から自然に触れることが多かったので、作るものにも、それは反映されているように思います。たとえば、葉っぱの形、流れるような枝、地面に浮き出る根っこ、川の水の流れる様、ころんとした石ころのシルエット、木の実やタネの不思議な形。そういった、私が美しいと感じてきたものすべてが、私の中に蓄積され、今作っているものに投影されていたらいいな、と思います。Q 成形の際に意識していることはありますか。
小鉢のシリーズは、ろくろ成形のあとに一点ずつ動きをつけているのですが、両手に抱えたとき、手にしっくりと馴染むような、やわらかい曲線を目指しています。よく、軽い・薄いということを言っていただけますが、それも、いかに手に馴染むか、というところを追求した結果かもしれません。 オーバル皿はたたらづくり(板状にした粘土を型に押し当ててつくる)ですが、すべて同じ形になるのは退屈で、縁を一点ずつカットして仕上げています。縁の形に特定の型は設けず、いつもフリーハンドです。その時の気分や心持ち、私の心の中の波に連動している気がして、このオーバル皿は【風浪(ふうろう)】と名付けています。Q 自身の器へのこだわりについて教えてください。
『一つとして同じものにならないことを恐れないこと』ろくろを引くにしても、型で作るにしても、それぞれ、全く同じ姿に作ろうと思わないこと、を心がけています。形がすべてきれいに整い、同じ形に仕上げることが技術である、と教わってきたし、はじめはそのような考えのもとで作っていました。しかし、全く同じ形にしなければ、と思って作ったものはどこか伸びやかさがなく、縮こまった仕上がりになるような感覚がありました。機械ではなく人が作っているのだから、泥蜂が作った巣がみんな違った形になるように、そしてどの巣もそれぞれに美しいということを忘れないように。違うことを恐れないこと、を心がけています。 『楽しい、心地いい、という感覚で作ること』
こういう形に作ろうと考えてコントロールするのでなく、作っていくうちに自然と形が出来上がっていく感覚を大切にしています。大枠の器をある程度の大きさ・形状を決めてつくり(ろくろ、型、手びねりともに)、そこから、それぞれの器が、それぞれに合った形になるように、一点ずつと向き合って、動きを加え、削り、磨く作業に取り組んでいます。その時には、できるだけ頭で考えず。自分が心地いい、美しいと感じる形にたどり着くように。少し考えすぎてしまった、手を加えすぎてしまったな、と思うものは壊して、再生して、また作り直すようにしています。
Q 最後にご自身の作陶のテーマを教えてください。
【意識と無意識】は、作陶のテーマとして根底にあります。 無意識、とは、人の歴史の中で綿々と組み込まれてきた本能と、深く関わっていると言われます。つまり無意識とは、人の中に残る自然な部分、と考えることができるのでは?と。 人も本来は自然発生した自然な存在。自身の内にある自然の感覚=無意識をたよりに、人の無意識に訴えかけ、癒しとなれるようなものづくりをしたいと考えています。
自然やモノに対する純粋な向き合い方を反映した作品づくり。コントロールしすぎず、素材の持つ力を尊重する姿勢。石川微睡さんの器には、彼女の自然に対する深い感性と、日々の暮らしからインスピレーションを受けた美しさが織り込まれています。ひとつひとつが異なる表情を持つ器は、どれも唯一無二の存在感を放ち、私たちの無意識に響く力を持っています。使うたびに手に馴染み、日常の中でさりげなく心を癒してくれる。そんな特別な器を、ぜひ手に取って感じてみてください。
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